『国語教育界における 江部 満 氏』脱稿! 完成!

 企画からは1年過ぎたが,着手からは2か月で脱稿した。印刷所へ入れ,2月末には完成するだろう。執筆者の皆様に感謝する。江部さんの笑顔が見たい。卒寿おめでとうございます。

 残部が少しあるので,希望される方は事務局へ連絡を。nihongengogizyutukyoikugakkai☆gmail.com(☆を@へ)

 

 本書を江部満元編集長に御覧いただいた。「面白い本だね。」といっていただいた。その後,5月4日に鬼籍に入る。御冥福をお祈り申し上げます。本当にお世話になった。お葬式に行くことができた。有難うございました。

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国語教育における江部満氏

 

『国語教育界における 江部 満 氏』日本言語技術教育学会 編/目次

序  ―――――――――――――――――――――――――――― 柳谷直明     ⅰ

第一章 業績

「戦友」江部さん ―――――――――――――― 宇佐美 寛  一

国語教育を常にリードした編集長  ―――――― 野口芳宏   三

現場実践から教科教育学を創造している江部満氏  柳谷直明   七

第二章 思い出

「学習用語」指導による国語科授業改善 ―――   渥美清孝  一七

江部さんのこと ――――――――――――――   安藤修平  二四

知への情熱 ――――――――――――――――― 岩﨑 淳  二七

教育的オーケストレーションを奏でた人・江部満さん 大内善一  三二

国語科教育の改革 ――――――――――――――― 篠原京子  四六

教室から全国へ ―― 実践家の育ての親 江部 満   冨樫忠浩  四九

公私に亘る人生の師、江部編集長  ―――――― 野口芳宏  五二

恩人江部さんへの感謝再び ~ 「エディターシップ」の具現者 望月善次  五八

江部編集長の七文字に励まされ ――――――――   山中伸之  六一

第三章 講演記録~野口芳宏先生古稀記念研究集会(平成一七年一〇月八日千葉大)~

国語教育史の裏話 ―――――――――――――――  江部 満 六五

跋 ―――――――――――――――――――――  柳谷直明  九三

 

第一章、第二章は執筆者名の五十音順にした。

 

学会刊行の本書の「跋」にはそぐわないかもしれないが、本書発行の切っ掛けと私の主な思い出を述べる。

本書発行の切っ掛けは、野口芳宏氏の次の一言だった。

「誰か、江部さんの本を書いてくれないかな。」

平成三〇年一月五日、「鍛える国語教室」研究会第八回全道大会を上砂川町立中央小学校で開催した。その前日、宿泊先の上砂川パンケの湯での一言だった。

「江部さんほど、日本の教育に貢献した人はいない。」

 このような理由からだった。

私は江部満氏にかわいがられた。いただいた私信に「先生は信頼できる方ですね」と書いてもらった。そんなことはない、と恐縮したが、実に光栄だった。江部氏が元気で活動していた最後の最後まで、日本言語技術教育学会で私はお世話になった。お目にかかる度に、温かな励ましをもらった。そのお礼に私が江部氏の本を編もうと決めた。

現職派遣での大学院で書いた修士論文『小学校での言語教育を成立させる学習用語のカテゴリー化とその獲得』(北海道教育大学受理)を江部氏へ送った。確か、平成一五年三月である。すると早速、三月一二日付で次の私信が届いた。

 

前略 (執筆前にプロットをお送り下さい。)

「学位論文」拝見しました。よくぞここまでまとめられましたね。感服しました。私の四十数年の編集者生活でも初めてといえる労作です。それは国語科教育改革者といえるものだからです。

「学習用語のカテゴリー化で国語力育てる」

という書名で、出版させて下さい。ただし一・二章の理論編部分はカットいきなり提言に入り、主張を示して下さい。

A5判(52字×18行)一四〇ページです。あくまでも実用提案として下さい。その後、「読むこと術語マスターカード」低・中・高でさらに問題提起をお願いします。このことについては後ほど打合せします。とりあえず。

 

何度拝しても、胸が熱くなる。江部氏は励ましの大名人でもある。

単著とともに、更に複数の依頼をいただいた。その後、何度も励ましていただき、平成一六年三月『21世紀型授業づくり83 〈学習用語のカテゴリー化〉で〈国語学力〉を育てる』を江部氏の企画で刊行できた。

平成一七年一〇月には、『確かな国語学力(基礎・基本)を育てるマスターカード』全八巻、平成一九年三月には、『作文力マスターカード』全四巻もそれぞれ江部氏の企画で刊行できた。

いずれも版を重ねることがなく、明治図書には多大な迷惑を掛けたが、国語科教育に「学習用語」を定着させるのには、貢献できた。平成三一年現在では、多くの教科書に「学習用語」という言葉が使われている。この一五年間の成果である。特に、江部氏が我々の後押しをしてくれたお蔭様である。

江部氏が私に期待してくれたのは、国語科教育改革だった。私が編集した本が売れなくても、一つも文句を言われたことはなかった。次々と出版企画をもらった。

江部氏は昨年一二月で数え年九〇歳を迎えた。卒寿を記念して、氏の功績の一端をここにまとめることができた。そして、江部氏を後世に残すために、少しだけの手伝いができた。私にとっては、本書は数多くの学びの場だった。誰もが、江部氏を愛し、自分が一番江部氏に愛されていたと述べている。ものすごい人徳に触れることができた。

なお、急な依頼にもかかわらず、執筆いただいた皆様に心から感謝申し上げる。御多用の中、大変に有難かった。また急であり、短時間だったので、執筆したかったのに執筆できなかった多数の理事には、心からお詫びする。

国語科教育の大恩人、江部氏の笑顔が目に浮かぶ。野口氏の切っ掛けのお蔭様で有難い仕事をさせてもらった。

 

 

 平成三一年二月八日 江部満氏の卒寿を祝して、功績の一端を記す。                    

                   日本言語技術教育学会会長 柳谷直明